女性向け広告が男性向けの3倍!?首都圏の電車内ビジョン動画広告

最近、弊社の映像の制作事例で、電車内サイネージ(以下、「電車内ビジョン」)向けコンテンツを制作する機会が多くなっています。電車の出入口扉の上部に付いたTVモニターに、TVCMやオリジナルコンテンツが上映されている広告のことです。


首都圏の電車利用者であれば、すっかりお馴染みの風景ですね

自社で制作されたものが、公衆の目の届く所に上映されるとなれば、一度は自分の目で見てみたいもの。配信期間、出稿されている予定の路線に乗り、しばらくこの画面を見ているうちに、ちょっと気づいたことがあったので、調査してみました。

調査の前に。電車内ビジョンの特徴について

2002年、JR山手線に「トレインチャンネル」として登場したのが初めての電車内ビジョンです。現在では、JR東日本では5路線(山手線・京浜東北/根岸線・埼京線・中央線快速・京葉線)でトレインチャンネルは展開されています。その後、地下鉄・私鉄でも開始され、現在では、東京メトロの「Tokyo Metroビジョン」、東急の「TOQビジョン」、JR西日本の「WESTビジョン」等、東京・大阪を中心とした首都圏のJR・私鉄で電車内ビジョンは展開されています。(参考:wikipedia「トレインチャンネル」)

停車駅案内の隣に表示される位置関係から注目度が高い、帰宅中に接触するため購買に直結する動線が期待できる、女性専用車両/曜日/時間帯などに応じて出稿できるなどターゲットを比較的明確に設定できる、等といった出稿側のメリットもあり、登場以来、広告媒体として非常に注目されているようです。中吊りやステッカー広告と比べても非常に高い視認率を誇っています。

「交通広告調査レポート2011」より 

画面をずっと眺めていて「女性向けの広告が多くないか?」

私は通勤に地下鉄の南北線を利用しています。この南北線は、東急目黒線が乗り入れ、やがて埼玉高速鉄道線へと乗り入れます。弊社制作の電車内ビジョン動画は、東急の「TOQビジョン」に出稿されていたため、たまたま帰宅中、東急の車両に乗り合わせた時、ずっとビジョンを眺めていました。

その間、TVCMを流用した動画や、オリジナル動画などによって、様々な商品やサービスの紹介動画が流れます。ファンデーション・基礎化粧品・シャンプー・ボディーソープ… あれ?なんだか「女性をターゲットとした商材」が多くないか?とふと思いました。男である私にとって、関係性が薄いからこそ気づいたのかもしれません。

早速、ネット等で調べてみましたが、今回の気づきにジャストフィットするような、電車内ビジョンと女性に対する情報を探し出すことができませんでした。 

参考:女性は休日も、「駅ナカ」広告を見る―「駅ナカ」デジタルサイネージ効果検証中間報告 (2010/12/16 japan.internet.com)より引用
男性は平日の通勤・通学の日常的利用が駅の基本利用スタイルだが、一方女性は、土日、祝日も比較的駅を利用する機会が多い。また、平日と土日、祝日では行動モチベーションが異なり、「余裕があれば色々なものに関心を示す」傾向が現われている、と分析している。

そこで、実際に東京圏の電車内ビジョンについて調べてみようと思い立ち、先週の木・金で、JR・私鉄の5路線を調べてみました。

<調査の方法・概要>
・実際に各路線に乗車して、1ターン(※)が終わるまで、広告主・訴求内容(商品/サービス)・対象性別・他路線でも目撃したかどうか・制作内容の種類(テレビCM等の流用か、電車内ビジョン専用に制作されたオリジナルかどうか) をメモする。
 ※:どの路線も数十コンテンツ、10~20分を1ターンとして、リピートしている。
・女性向け/男性向けの判断は、調査者の主観ではあるが、商品/サービス内容や動画の演出が明らかに異性に向けていないものを選別した。男性寄り・女性寄りではあるが、異性が使用しても違和感の無いもの(ビール:男性向けの広告ではあったが、ビールを飲む女性も少なくない 冷蔵庫:明らかに主婦向けの演出をした動画ではあるが、冷蔵庫は男性も購入する)はカウントしない。
・TV番組の番宣動画は、テレビでも流しているため、テレビCMとしてカウント 

調査結果!

最長の動画は1分程度あるのですが、最短の動画は15秒。この間に、動画を視て、そこからリストに記入する…。地味ですが、意外と大変な調査でした。

Tokyo Metro ビジョン 東京メトロ・丸ノ内線
まずは、弊社の最寄り駅、四ツ谷三丁目を起点に調査開始。毎日お世話になっております、丸ノ内線!意外と電車内ビジョン付きの車輌が少なく、6本やり過ごした後、ようやくビジョン付きの車輌が到着。

2013/4/5調査 四谷三丁目(14:10頃)~淡路町?(14:25位)  全コンテンツ数:34本

女性向け:10 男性向け:2
  
オリジナル制作:18本 TVCM流用:16

5路線中、最も女性向け動画広告が多く見受けられました。 やはりファッションなど美にこだわり、可処分所得が多くある丸の内OLを強く意識した結果なのでしょうか。

トレインチャンネル JR・山手線
丸ノ内線をそのまま乗り続けて、終点池袋からはJR山手線に乗車!

昼間(14時頃)と夜間(21時頃)で、コンテンツの編成は変わっているかどうかも検証したく、山手線には2回乗車しました。その結果、編成は昼と夜とでほぼ同一であることが判明しました。(同一クライアントの枠で、コンテンツが代わっている例はありました。例:サッポロビール 昼=ワイン 夜:ビール(エビス) 任天堂 昼=WiiドラクエⅩ 夜=ゲームパッド ただ、これは、昼夜で変えているというよりも、ターンによって入れ替えているようです。)

コンテンツを入れ替え、時間内容に沿った訴求(朝=コーヒー 夜=ビールなど)をできることがデジタルサイネージの一つのメリットなのですが、トレインチャンネルではこうした施策は行なっていないようです。

2013/4/5調査 池袋(14:51)~目黒(15:09) 新宿(20:52)~田端(21:08)
  全コンテンツ数:42本

女性向け:4 男性向け:2  オリジナル制作:18本 TVCM流用:24

目黒から、東急目黒線でTOQビジョンの調査しようと試みましたが、なんと45分間、10本やり過ごしてもビジョン付き車輌が現れず、断念。私が帰宅中に見たのはけっこうレアだったのかもしれません。

TOQビジョン 東急東横線
東急のリベンジということで、東横線に変更して副都心線・新宿三丁目から乗車!東横線乗り入れが先月始まって便利になりましたね。

2013/4/5調査 新宿三丁目(19:50)~渋谷(19:58)
  全コンテンツ数:22本

女性向け:4 男性向け:2  オリジナル制作:13本 TVCM流用:9

ちなみに駅構内のサイネージでは、金曜の夜ということもあってかビール・酒関係の広告が目につきました。こちらは時間帯によってコンテンツを変更しているようです。 

トレインチャンネル JR・京浜東北線
自宅の埼玉方面に向かうために、田端から乗車しました。

2013/4/5調査 田端(21:11)~西川口(21:31)
  全コンテンツ数:51本

女性向け:6 男性向け:2  オリジナル制作:19本 TVCM流用:32

路線が長く、長時間乗車する人が多いためか、5路線中最多の51コンテンツ、1ターン20分に渡る編成となっていました。

◆西武スマイルビジョン 西武鉄道
先週より、弊社にアルバイトとして学生のK君が来ることになりました。今回の記事のリサーチを手伝ってもらった延長で、通学に使っている西武鉄道の状況を調査してもらいました。テスト調査ということで、項目等を明確に定義していなかったため、参考として挙げておきます。

2013/4/4調査 (20:00頃~20:30頃)
  全コンテンツ数:33本

女性向け:6 男性向け:2  オリジナル制作:17本 TVCM流用:16

やはり、路線沿線の情報が多いのが、地方路線の特徴のようです。

まとめ

以上、2013/4/4~5にかけて、5路線を調査してみたデータを整理してみましょう。

全コンテンツ数:182本中、
女性性向け:30本(16.5%) 男性向け:10本(5.5%) 両性向け:142本(78.0%)

オリジナル制作:85本(46.7%) TVCM流用:97本(53.3%)

他路線での出稿があったもの:135本(74.2%) ※同一会社/他社含む

これらのデータから、以下の事が導き出せるといえるでしょう。 

◆圧倒的に両性向けの動画広告が多いが、女性をターゲットとした動画広告は、男性をターゲットとした動画広告の3倍の数が出稿されている。
◆コンテンツの半数以上は、テレビCM等、車内ビジョン以外も想定して制作されたコンテンツである。
◆車内ビジョンに出稿する広告主は、複数路線に出稿する傾向が見られる。 

勿論、調査対象の路線を広げれば別の数字が出てくると思いますし、季節や地域(東京圏・大阪圏)によって数字は異なるはずです。ひとつの目安にして頂ければと思います。

今回のデータをリスト化したPDFをアップロードしておきます。(記載した情報の正確性は検証していません。また、このデータを利用しての不都合について弊社は責任を持ちません。予めご了承下さい) 興味のある方は、是非、ダウンロードの上、ご確認下さい。

Photo By takeshisz tirol28  chang17