震災とインターネットのこれから

アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。

今日は2015年3月11日。東日本大震災より4年目を迎えました。テレビの報道番組や、ネット上などで当時の様子が改めて取り上げられています。

震災発生当時、東京新宿区で働く僕らは会社でその瞬間を迎えました。小学校以来初めて地震の揺れで机の下に潜り込む経験をしました。東京の交通網は完全に麻痺し、オフィスのテレビで津波が、空港や町々を襲う様子を見ました。帰りのコンビニは棚が空っぽになっていて開店休業状態でした。今日は「震災とインターネット」をテーマにお送りします。

電話回線の寸断で安否確認が難しかった阪神・淡路大震災

1995年、阪神・淡路大震災時には当然ながらインターネットが本格的には普及していませんでした。電話回線がダウンしたことで安否の確認が困難を極めたことが、1998年の「災害用伝言ダイヤル」の開設へとつながりました。しかし災害用伝言ダイヤルは、音声通話をベースにしたサービスだったので、地域の安否情報は電話回線の生きた場所にたどり着かない限り、有効に活用することは出来ませんでした。

電話回線パンク後も大量のアクセスを捌けたネット回線

2011年、東日本大震災時には「災害用伝言ダイヤル」に代わって、Twitterなどのソーシャルメディアが大きな存在感を示しました。電話では話せてないけど、「ソーシャルメディアの書込を見る限りは無事らしい」という状況をネット上で多く目にしました。電話回線はパンクした一方で、大量のアクセスを捌けるネット回線を通して安否情報を共有することの有効性が示されたのです。キャリアも音声ではなくネット回線を利用したモバイル端末向け「災害用伝言板サービス」を次々と開設しました。

安否情報の最新情報が示されると同時に、スマートフォンからは震災の生々しい現場が次々と投稿されました。ネット回線がかろうじて生きていた地域では、USTREAMやニコ生などの生中継サービスでリアルタイムの動画投稿があった他、ネット回線がなかった地域でも、一度携帯電話やスマホ内に保存された動画がのちのちYouTubeなどにアップされ、テレビでの報道などでもそれらが紹介されていきました。津波で壊れる家々を高台から撮影した動画には、同じく高台に避難した地域の住民の悲鳴が生々しく記録されていました。

震災時にもつながる空中インターネット網

2015年、いま日本で震災が起こったとして活躍しそうなのはソーシャルメディアに加えて、LINEなどのチャットアプリでしょう。リアルタイム性があり、かつ日常のグループ内での安全確認や情報交換が瞬時に行えることは避難や被災後の安全確保に役立ちそうです。さらに、ネット回線のアベイラビリティを飛躍的に改善してくれそうなのが、Googleが中心になって開発している「Project Loon」に代表される空中を舞台としたインターネット網の発達です。

Project Loonは、太陽電池やネット回線機器を搭載した気球を、飛行機などの航行に支障をきたさない高度20kmの高さに回遊させることで、地上のインターネット回線が行き届いていない地域でのインターネット利用を可能にする試みです。Googleはこのプロジェクトを推進する傍ら、太陽光発電を持つドローンを開発していたTitan Aerospace社を買収しています。気球と長期間飛行可能なドローンを組み合わせることで、空からインターネット回線を提供するのではと期待が高まっています。

電話回線同様、地上のネット回線もまた拠点が被災した際にはエリア全体が利用不能となります。その点、空中のネット網が完成すれば、震災時にも安定したネット回線が利用できる可能性があります。

Project Loonは、ニュージーランドやブラジルの一部地域で接続テストがすでに行われており、接続に成功しているようです。

まとめ

日本に住んでいる限り、震災を避ける事は出来ません。関東大震災、阪神・淡路大震災では、多くのデマが流れました。東日本大震災では、ソーシャルメディアを通した安否確認が進んだ一方で、安全に関するデマもまたネット上を駆け巡りました。大災害の現場とソーシャルメディアが日本で初めて出会ったこの震災では、多くのデマが生まれ拡散しましたが、同時にまた次々と否定されていきました。

ネットユーザーはNHKの震災報道をUSTREAMなどの生配信サイトで勝手に配信し始め、のちにNHK・民法共に公式で震災に関する情報のネット中継(サイマル放送)をスタートしていきました。

今後、Project Loonのような常時接続されたインターネット網が確立した時、信頼できるテレビやメディアの報道発表などの一次情報源に誰もがアクセス可能な状態が保たれることになります。これにより、デマ発生の減少や真偽の確認が迅速に行われることが期待できます。ソーシャルメディアによる自治体などの公式アカウントの発表や、チャットアプリによるグループ内の情報共有も、前の震災よりもっとうまく活用されるのではないかと考えます。

大災害ではパニックは必ず起きるでしょう。しかし、情報技術の進化がその被害をきっと低減化すると、僕は考えています。

[アクトゼロ/黒沼(@torukuronuma)]