マクドナルドの食の安全性をオープンにする取り組みと、「完璧ではないこと」に慣れない消費者

アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。今日はマクドナルドの異物混入についてお送りします。

マクドナルド・カナダの取り組み「Our Food. Your Questions.」

2012年マクドナルド・カナダは、「Our Food. Your Questions.」という動画シリーズをYouTube上に公開しました。マクドナルドについて消費者が感じている食の安全への疑問点に、社長やスタッフが取材を元に直球で応えるというコンテンツで、大きな話題となりました。食肉工場や産地、作業工程までをオープンに見せることで、食の安全性をネット動画時代にどうやって消費者に伝えるかの、ひとつの取り組み方を提示しました。

グローバルに広がる動画を通した「食」についての対話

その後2014年マクドナルドはグローバルにこのプロジェクトを推進させます。グローバル統括のYouTube公式アカウントで、更に動画コンテンツを増やしていきました。

内容はより踏み込んだもので、ネットで話題になったピンクスライム肉の使用について答えるなど、より直接的な消費者の疑問に答えるシリーズとなっています。2014年には日本マクドナルドも同様に、食の安全性についてYouTube上で動画コンテンツを公開し始めています。ビーフの生産者や仕入先の担当者などが実際に登場し、製造過程について紹介しています。

2014年マクドナルドはブランド全体で、食の安全性を透明化しオープン化しようとしていた矢先でした。今回の騒動が起こります。

 そしてそれでも起きた異物混入騒動

nico2015/01/08ニコニコ生放送での会見

日本マクドナルドは昨日、一連の異物混入騒動についての会見を開き謝罪しました。日本マクドナルドの役員たちは、巨大チェーン店マクドナルドの異物混入ゼロを目指す取り組みについて説明しつつ、それでも防ぐことが出来なかった事実を認めて謝罪を行いましたが、記者から厳しい追求を3時間にわたって受け続けました。

ソーシャルメディアで複製され伝播する「当事者の感情」

この騒動について考えるとき、僕にはふたつの感情が湧きます。

ひとつは「そうはいったってミスを完全になくすことは出来ないわけだから、こういうことが起こることもあるよね。減らすことは出来るかもしれないけど」とマクドナルドをフォローしたくなる感情。

そしてもうひとつは、自分が店頭で買った商品に異物が入っていたら当然怒るだろうなという感情。もし私が学生だったらほぼ間違いなくツイートするでしょう。しないわけがありません。「格好のネタ」なのだから。

ソーシャルメディアを通して、この手の炎上騒動が起きるときその広がり方はいつも同じです。ソーシャルメディア上で当事者が声を上げる→ソーシャルメディア上で拡散が進む→まとめサイトが取り上げることでネット上の「話題」となる→ネットメディアが取り上げる→マスメディアが取り上げる。というながれです。

その過程で、読者は一番生々しい当事者の感情のこもった「最初のツイートや書き込み」に直接触れることになります。ここで事件を知った人たちは「当事者の感情」をコピーして、自分のことのように反応します。共感による感情の伝染が起きているのです。情報の拡散とともに当事者の感情がコピーされるていくことで、炎上はさらに加熱していきます。

「完璧」じゃないことに戸惑う消費者

今回のような食品への異物混入事故は、これまでであれば店舗側と当事者の間で何らかの落とし所が図られて終了していた問題だと思います。僕達が知らないだけで、そういった事故は無数に起きていたはずで、消費者は知らないからこそ「完璧な安全」を信じることができていたのです。

ソーシャルメディア登場以降、個人の情報発信によって日常的に起きていたこれらの事件が公のものとなり、消費者はその騒ぎに触れるにつけて、自身を取り巻く食の安全が「完璧」ではないことに気付き始めているのです。もちろん企業側の努力により、いままで以上に安全性は高まっていくでしょう。しかしそれでも、完璧に防ぎきることは出来ないはずです。

消費者が「完璧」を求めることが不可能なのだと気づく日まで、今後も消費者による苛烈な追求は続きます。

 

[アクトゼロ/黒沼(@torukuronuma)]