企業と顧客の「接点」で広がるメディア化の動き。「枠」としてのネイティブアドネットワークの可能性

アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。

3月23日、企業のオウンドメディア支援を手がけるインフォバーンは三越伊勢丹ホールディングスとの業務提携を発表しました。

三越伊勢丹ホールディングスとの業務提携について
インフォバーンは、WEB「FOODIE」を共同で運営する三越伊勢丹ホールディングスとの業務提携を行い、本件のみならず、両社でWEBビジネスの分野におけるさらなる可能性を探ってまいります。
また、本提携により、インフォバーンのデジタル施策を駆使して企業とユーザーをつなぐデジタルエージェンシー事業者としてのノウハウ、並びに三越伊勢丹ホールディングスの百貨店・流通事業者としてのノウハウ及び顧客基盤を相互活用することで、両社の企業価値のさらなる向上を目指してまいります。
インフォバーン、三越伊勢丹ホールディングスとの業務提携 ~”WEB「FOODIE」”2015年春スタート!~ | インフォバーン 

三越伊勢丹グループは、2012年にもイードと業務提携しFashion Headlineというメディアを運営していますが、今回のインフォバーンとの提携は、顧客接点におけるメディアの活用についていよいよ本腰を入れていくという宣言だと感じました。インフォバーンがこれまでに携わった企業メディアで代表的なものは、資生堂の「Beauty & Co.」、サントリーの「ハレナビ」、IBMの「Mugendai」、花王「マイカジスタイル」などそうそうたる顔ぶれとなっています。

「消費者の輪」に入れない企業情報をコンテンツ化して届ける

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消費者のネット利用は、よりSNSを中心にした形に変化してきています。従来の検索中心型のネット利用から、SNS中心型のネット利用傾向が進んだ結果、消費者は企業情報や旧来型の広告を「自分とは関係のない情報」とフィルタリングしてしまうため、消費者の「話題の輪」の中に、企業の発信する情報が入ることが難しいという現状が起こりつつあるのです。

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そこで、企業自らがメディアを運用し(狭義のオウンドメディア)、「企業の持つ価値」と「顧客の興味」の重なる部分を記事コンテンツとして噛み砕いて発信していくことで、「消費者の輪」の中に情報を流通させようとする試みが各社で取られ始めています。先に紹介したB2C企業による取り組みもこうした文脈に依るものなのです。

企業メディアが発信するコンテンツを、興味関連性の高いユーザーに拡散する「ネイティブアドネットワーク」

こうした企業メディア運用の一般化に答える形で注目を浴びるのがネイティブアドネットワークです。ネイティブアドと聞くと「記事広告っぽいコンテンツ」を想像しがちですが、ネイティブアドネットワークは関連記事を紹介するようにメディア同士をつなぐ「広告枠」のネットワークのことです。

例えば、ランニングスポットに関するメディア記事の関連記事として、企業メディアが作成したランニングウェアの開発者インタビュー記事が表示されることで、ランニングに興味のある消費者に自社のウェア商品の認知を広げる。といった形で運用されます。

企業メディアで公開されたコンテンツでも、記事クオリティ次第で自然検索流入やソーシャル拡散が進む可能性がありますが、より多くのユーザーに届けたい場合にはこうしたネイティブアドネットワークの存在が有効になってきます。こうした広告枠ネットワークの信頼性は、飛び先のコンテンツのクオリティと内容の関連性が担保されていればユーザーの体験を損なうことはないでしょう。

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 ネイティブアドネットワークの分野では、ログリーアウトブレイン各ニュースアプリなど数多くのプレイヤーが存在していますが、2014年からYahoo!も「コンテンツディスカバリー」として本格的に参入してきています。

Yahoo!関連メディア上(Number Web、@DIME、MEN’S+など)で、技術提携関係のあるTaboola,Inc.独自のレコメンドエンジンを使用することで、記事コンテンツの関連性を確保します。また、掲載コンテンツの内容はYahoo!ニュースチームがそのクオリティを審査するという形で運営。「関連性」と「記事クオリティ」を保ち、ネイティブアドネットワーク自体の「信頼感」を維持しようとしています。

今後はネイティブアドにおけるコンテンツクオリティ同様に、ネイティブアドネットワークでもユーザーの体験品質の勝負となっていくのだろうと思います。

[アクトゼロ/黒沼(@torukuronuma)]