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LGBTプライドパレードを支援するスポンサー企業、その背景と日本での状況について

アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。

2014年11月11日ハフィントン・ポストで以下のニュースが取り上げられていました。

米アトランタで行われたLGBTのパレードイベント「アトランタプライド」において、イベントのスポンサーであった「ケロッグ」の広告に不満を感じたゲイ・ヘイト団体が不買運動を起こしたというものでした。

性的指向や性自認についての誇りをパレードを通して共有するイベントは「ゲイパレード、プライドパレード」と呼ばれて世界中の都市で定期的に開催されています。参加規模はアジアで最大の台湾パレードで七万人(2014)、アメリカやヨーロッパでは特に盛んで数十万人規模のイベントがいくつも存在しています。世界最大のものは、ブラジルのサンパウロで行われる「サンパウロゲイパレード」で五百万人(2013)の動員があり、年々参加者が増えています。

AppleもFacebookも企業ぐるみで参加

Appleは2014年のサンフランシスコプライドパレードのスポンサーになりました。CEOティム・クックを中心に社員によるパレード参加を行っています(後にティム・クックは自らゲイであることを公表)。Facebookもパレード用のトロリーを用意し、ザッカーバーグ自らパレードに参加している様子がYouTubeに公開されています。その他のスポンサーもそうそうたる面々で、バドワイザー、ヴァージンアメリカ、スミノフ、バーガーキング、バンク・オブ・アメリカ、コカ・コーラ、セールスフォース、at&t、インテル、オラクル、リーバイスなどアメリカを代表する企業が協賛を表明しています。

 冒頭のケロッグの様に、プライドパレードを支持することで不買運動が起きることは珍しくありません。世界各地でそれぞれの社会において程度の差はあれ拒否反応はおきます。それでもなお、スポンサー企業が参加するのは、性に代表される様々な多様性を支持することが、自社のブランディングにつながっていると考えているからです。ゲイ・ヘイト団体の反発が起きることを織り込んでも、社会のゲイパレード支持が多数派であるかぎり、企業に参加しない理由はないのです。

もちろん企業も思想的共感から参加することはあるでしょう。しかし、「考え方が社会的に支持されている」ということが、スポンサー参加のハードルを下げていることに間違いありません。

 日本のプライドパレードの状況は?

 東京では2014年4月「東京レインボープライド」が行われました。参加者は主催者発表で一万五千人。スポンサーとして参加した大手企業は、アルファロメオ、チェリオ、IBM、フィリップス、海外金融機関が多く所属する東京インターバンクフォーラムなどで、純粋な意味での国内の大手企業は大阪府のチェリオコーポレーションのみでした。東京レインボープライド自体の規模や知名度がまだまだこれからということがあるとはいえ、グローバル企業のメッセージが先行している印象は強いです。

thm公式ガイド内で展開されたスポンサー企業の広告

 

社員数も多く、国籍や文化など様々な差異を超えてビジネスを展開していく必要のあるグローバル企業にとって、多様性への対応は早い段階でかならず克服しなければいけない課題です。彼らはこの課題をプライドイベントへの支持表明によって、社内外への強力なメッセージとして打ち出し、「多様性の尊重」を自社の企業文化へと昇華しているのです。

LGBTや性のありかたの多様性について、オープンな話題となる機会の少ない日本において、国内企業が「社」としての意見を表明することに慎重になる気持ちはとても良くわかります。しかしその一方で、そんな日本の状況を意に介さず、グローバル企業による支持表明が力強いメッセージで行われていることに、少し残念な気がしてしまいます。

[アクトゼロ/黒沼(@torukuronuma)]